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生業に関わる方法
■キーワード
■目的
堆積物より抽出した花粉化石から、遺跡周辺の古植生と植生変遷史を解明することを目的とします。 なお、ここで言う遺跡周辺とは比較的広い範囲を含みます。なお、水田稲作や雑穀栽培(ソバなど)についても検討します。
■対象試料
試料は、溝や池沼、河川、海などに堆積したシルト・粘土・泥炭などの水成堆積物です。 ただし、砂礫層は対象外です。花粉粒はシルトや粘土と挙動を同じくするため、これらより粗い砂礫層中には残りにくいからです。 また、風成層も対象外です。地面(乾陸地)に落下した花粉は紫外線や土壌バクテリアなどにより分解され、残りにくいからです。
■方法
採取した堆積物(試料)約5g程度を水酸化カリウム(10%KOH)処理-傾斜法-フッ化水素酸(46%HF)処理-重液分離(比重2.15)-アセトリシス処理の順に化学・物理処理を行います。こうした処理の目的は、砂など花粉以外の不純物の除去です。処理後の残渣をグリセリンで封入し、生物顕微鏡(600-1500倍)を用いて同定・計数して花粉組成を調べます。
■解析・考察
同定・計数の結果から花粉分布図や花粉産出表を作成します。 これを基に各時期において遺跡周辺にどのような森林が成立していたか、あるいは草地や湿地が形成されていたかを解明します。
さらに、遺跡の成立と植生変遷から、人間の周辺植生への係わりについて検討します。 すなわち、遺跡成立に伴う木材利用による森林破壊の様相や、低地部における水田稲作の開始・拡大による低地植生の変化などです。
■他の分析との併用
花粉は風に乗って広範囲に散布されるため、遺跡における花粉組成には離れた場所の植生も反映されます。 また、分類群によっては花粉が遺存しにくいものもあります。こうした花粉分析が有する一定の限界を考えれば、古植生や植生変遷史を解明するにあたっては、種子・果実や材の分析を併せて行うことが望ましいと言えます。