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遺物の材質および技法
■キーワード
■概要
蛍光X線分析による胎土分析は、窯を使用した陶器などの生産地を推定する場合に用いられていますが、 生産地の焼物の化学的特徴を調べる場合にも有効です。 焼物の化学組成は、使用した粘土のほか砂粒物やその他混入物の種類や量により大きく異なり、人工物としての材料分析が必要です。
■対象試料
分析試料は、型式学的に十分に検討した試料が望ましいです。試料の量は、約2g程度(2×1×0.5cm)を使用します。 なお、自然の釉薬や灰釉陶器などがある場合には、岩石カッターなどで除去するため、やや多めの試料が必要です。
■方法
方法は、岩石カッターで約2g採取し表面釉薬を除去した後、ガラスビード法またはブリケット法により測定試料を作成します。
測定は、フィリップス社製波長分散型蛍光X線分析装置MagiX(PW2424型)を用いて検量線法による定量分析を行います。
定元素は、主成分元素の酸化ナトリウムNa2O、酸化マグネシウムMgO、酸化アルミニウムAl2O3、 酸化ケイ素SiO2、酸化リンP2O5、酸化カリウムK2O、酸化カルシウムCaO、 酸化チタンTiO2、酸化マンガンMnO、酸化鉄Fe2O3です。また、微量元素のルビジウムRb、ストロンチウムSrなどです。
■解析・考察
測定結果は、一覧表を示すとともに、横軸に酸化ケイ素SiO2、縦軸に各元素をとり分布図を作成します。
窯内試料を複数個測定した場合、SiO2-Al2O3分布図では直線近似することが分かっています。 これは、一般的に砂粒はSiO2含有量が高く、粘土はAl2O3含有量が高いため、 直線が粘土と砂粒の混合ラインを示し、粘土と砂粒との混合割合が分布の幅として表現されています。 この関係は、その他の元素を縦軸にとった場合においても同様の傾向が見られます。 なお、こうした直線分布は、焼物の材料が粘土と砂粒のみから構成される2成分系において成立しますが、 さらにスサなどの植物繊維や起源の異なる物を混入した場合には成り立たないと思われます。
なお、焼物の化学組成を検討する場合、薄片法を併用することが望ましいと言えます。 ただし、薄片法による分析の対象は焼きの甘い土器に限られます。