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年代測定及び推定法
■キーワード
■概要
14Cのウィグルマッチング法では、年代間隔が分かる試料(木材の年輪、年縞堆積物など)を対象に複数点を14C年代測定します。 14C年代値と試料間の年代差の情報により得られた試料の 14C年代の変動パターンを較正曲線(IntCal09など)のパターンにマッチングすることによって、暦年較正の精度を高める方法です。 高い精度で 14C年代を計っても年代幅が絞りにくい、較正曲線が平坦な時期で年代幅を絞り込むことが可能です。
■対象試料
木材の場合、年輪が計測できる生材と炭化材が対象となり、樹皮直下の最終形成年輪が確認される木材や最終形成年輪に近い辺材が確認される木材が試料として望ましいです。 14C年代測定する年輪の箇所数が多いほど、より精度の高い年代が得られますが、較正曲線のパターンによっては少ない年輪数でも絞り込める場合もあります。
■分析方法
輪切りにした円盤形ブロックや成長錐で採取したコアを、カミソリなどで材の表面をクリーニングします。 形状観察と年輪計測を行い、樹皮側から5年または 10年間隔でピンを打ちます。 総年輪数と予想年代の較正曲線のパターンを基に、樹皮側(A)と芯側(C)に近い部分、この間(B)での採取ポイントを決めます。 最低3ヵ所のポイントが決まったら、1年輪あるいは5年輪分をまとめた年輪を、数年~数十年間隔で均等な量で採取します。 それぞれの試料は、不純物 を除去するための前処理(酸・アルカリ・酸処理;AAA処理)を行った後、二酸化炭素(CO2)を回収し、グラファイト(高純度の炭素)を生成します。 生成したグラファイトを加速器質量分析計(AMS)で14C年代測定を行います。
■考察
試料間の年代差が分かるため、14C年代の変動パターンを較正曲線のパターンと比較することが可能です。 年代較正解析ソフトウェア(OxCal4.1など)に組み込まれているプログラムを用いて、ウィグルマッチングを行います。 個々の14C年代から暦年較正を行い、統計的(ベイズ統計あるいは最小二乗法で計算)に較正曲線のパターンに最も一致する年代値を算出します。 最良の場合10年幅の較正年代が得られます
■他の分析法との併用
年輪年代法は木材の年輪幅変動の標準パターンと試料のパターンを比較して年代決定を行います。 なお、酸素同位体比測定は標準木材の酸素同位体変動パターン との相関から年代決定を行います。 これらの分析では、正確に年代を決定するためには100年輪以上の年輪を有する木材が必要とされます。 しかし、100年輪未満を対象とした年輪年代法や酸素同位体比測定でも、14Cウィグルマッチング法の併用により、高精度で年代を決定することが可能になります。