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生業に関わる方法

樹種同定生材

■キーワード

  • 木製品
  • 自然木
  • 用材選択
  • 古植生(木材資源)
  • 樹木特性
木材の構造
木材の構造

■樹種同定とは

樹種同定とは、組織の特徴から木材の樹種を同定する方法です。 ここで紹介するのは、炭化していない状態の木質遺物(生材)を対象とする樹種同定の方法です。

■意義・目的

1) 木製品の場合
樹木は種類によって、形態・材質・生態などの様々な異なる特徴を持っており、それらは木製品の用材選択の背景を考える上で欠かせない情報です。
例えば、高木か低木かは木材の径長に置き換えて考えることができ、製品の法量と関連します。加えて主幹がひとつで真直ぐに伸びる樹種の材は丸木のままのみならず割り出して利用するのにも都合よく、逆に幹が途中で枝分かれしていくつか主幹といえるものを出す樹種の材は分部を利用する製品に向くでしょう。さらに株立ち状になったり、基部から多数幹を出す樹種の材では同じような径長の材を効率的に採取することができ、通直な枝を張り出す樹種の材は柄などの製品に適すると考えられます。
中でも硬さ・重さ・強靱さ・腐り難さといった材質は重要な情報で、製品の使用法と関連するだけでなく、製作時にも割裂性・加工性として影響します。
また、その地域に通常分布しない樹種が見出されれば、持込などの可能性も指摘できます。
このように、樹種同定の利点は単に木製品の樹種がわかるという事のみでなく、材質をはじめとした様々な樹木の情報が明らかになり、それらと木製品の器種との関連性を考察できるようになる事にあります。
2) 自然木の場合
自然木は加工木とは異なり自然堆積したと考えられるので、その組成から古植生(木材資源)を復元することができます。過去どのような植生が周囲にあったのかを調査することで、木製品に用いられている樹種がどの程度選択されて周囲の林から採取されていたのかを明らかにできます。

■分析方法

木製品や自然木などの木質遺物が対象になります。

木質遺物から透けて見えるくらいの薄い切片を剃刀を使ってスライスし、木材組織を観察するためのプレパラートを作成します。 顕微鏡下で木材組織を観察し、その結果を現生標本と比較することで樹種を同定します。
樹木は鉛直方向に伸長しながら同心円状に肥大生長していくので、組織もそのような生長特性にしたがって並んでいます。
したがって、組織の構造を調べるには図のような決まった3方向の面を観察することが必要です。

■試料採取に関して

一般に、木製品からブロックなどの小さな木片試料を採取する方法も行われていますが、外見的にも遺物をかなり破壊してしまいますし、前述した「面」がでていないと量的に不十分になります。
弊社では、直接伺い木製品から切片を作成することを基本としています。破損面を中心に採取しますので破壊を最小限にすることができます(各面通常1mm以下)。また腐朽の進んでいない保存の良い部分を選んで大きな切片を採取し、肉眼視できる組織を確認できるのでより確実で詳細な同定ができ、さらに木取りも確認できる利点があります。
自然木の場合はブロック試料でも問題ありませんが、採取する前に形状や径などの情報を記録しておくとその後のデータ解析に有益です。
ブロック試料は最低1年輪以上あれば同定可能ですが、3cm角程度あれば確実です。