業務案内

生業に関わる方法

樹種同定炭化材

■キーワード

  • 燃料材
  • 建築材
  • 鉄分浸透木質遺物
  • 用材選択
  • 樹木特性

■樹種同定とは

樹種同定とは、組織の特徴から木材の樹種を同定する方法です。ここで紹介するのは、炭化材を対象とする樹種同定の方法です。

■意義・目的

森林地帯に位置する日本列島では、豊富な森林資源を背景に、燃料材や建築材として木材が主に利用されてきました。

住居内の炉跡、集石炉、製鉄炉、炭窯、火葬墓、窯跡や灰原など火を利用した遺構から出土する炭化材からは、 燃料材としてどのような樹種を利用していたかを知ることができます。窯業など生産活動には、膨大な量の燃料材が必要となります。 それを支えるための樹木の大量伐採が、二次林化の進行、伐採に伴う災害発生など森林環境に多大な影響を与えたことが想定され、 また森林環境の変化は生産活動にも影響を与え たと考えられます。こうした人間と森林環境との関係を理解する上で、 樹種や樹齢といった木材利用に関するデータを収集することは重要です。

焼失住居跡の建築材からは、住居建築材の樹種構成が判ります。また、炭化材ではありませんが、古墳から出土する鉄釘の周囲に残った 棺材・刀剣類の柄や鞘・鏃柄などは、鉄分が浸透し、ごく僅かに残存していることがよくあります。 この場合も、炭化材と同様 の方法で樹種と製品の対応関係を調べることができます。

以上のような木材利用に関するデータを蓄積することで、地域や時代による樹種利用の変化や、用途による樹種選択性が明らかになります。

なお、生材(炭化していない状態の材)は低湿地遺跡からの出土が多いのに比べ、炭化材は乾燥した堆積層中からも出土します。 したがって、低地だけではなく台地上や山中における木材利用に関する情報を得ることができます。

■分析方法

堅くて大きく、炭化材内部に土が染み込んでいない炭化材が良いことはもちろんですが、5mm角程度の小破片でも1年輪が含まれ、 堅くしっかりした炭化材であれば、対象試料となります。

試料は、1本の木として個々に取り上げられる場合と、土壌中に含まれる炭化材を遺構や層位ごとに一括して取り上げる場合があります。 前者の場合は、炭化材の形状や性格(燃料材、建築材、木製品、その他など)を記録した後、できるだけ炭化材の全体を取り上げておくと、 木取りや加工の形状、含まれる年輪数などが記録でき、樹種による加工や樹齢の違いなども検討できます。 試料採取の際の注意点として、同一材を重複採取しないようにすることがあげられます。

炭化材の組織は生材と変わりありませんが、その組織を観察する方法は異なります。炭化材の分析方法は、試料を乾燥させた後、 図のような横断面、放射断面、接線断面が出た3つの小ブロックを作成し、金を蒸着させます。次に走査電子顕微鏡(SEM)でこの 3断面の材組織を拡大して観察し、 その結果を現生標本と比較することで樹種を決定します。

観察する3方向の断面
観察する3方向の断面
観察用の小ブロック
観察用の小ブロック
クリの木材組織(左:横断面、中央:放射断面、右:接線断面)
クリの木材組織(左:横断面、中央:放射断面、右:接線断面)

炭化材は乾燥していても分析ができ、発掘後に長年保管されていた試料でも、樹種同定は可能です。