業務案内

古環境復元

珪藻分析

■キーワード

環境指標種群・堆積環境・海水・汽水・淡水・陸域・陸生珪藻

■概要

珪藻分析は、堆積物の堆積環境を推定する目的で行います。

珪藻は淡水から海水に至るほとんど全ての水域に生息しており、水域生態系の一次生産者として重要な位置を占めています。 また珪藻は、種ごとに淡水域から海 水域の中の様々な水域に適応して生息しているため、環境を指標する藻類です(小杉,1988;安藤1990)。 そして、微小(0.01~0.5mm程度) ながら珪酸体からなる殻を形成するため、化石として地層中によく保存されており、 それらを利用した堆積環境の推定によく利用されています。

■分析試料および方法

分析試料には堆積物1g程度を通常使用します(粗粒の堆積物の場合は量を増やして分析します)。 小指の先程度の試料があれば分析は可能ですが、試料の状態により処理する量が変化しますので、実際は35mmフィルムケース程度が必要です。

試料を約1g程度取り出し、30%過酸化水素水を用いて、有機物の分解と粒子の分散を行います。 その後、細粒のコロイドを除去するため、1時間間隔で上澄み液の除去作業を7回程度繰り返し行います。 そして、残った試料をマウントメディア(封入剤)で封入し、プレパラートを作成し、光学顕微鏡下400~1000倍で同定・計数を行います。

環境指標種群は、汽水海水域については小杉(1988)、淡水域については安藤(1990)により設定されています。以下にその区分を示します。

静岡県浜名湖
静岡県浜名湖  スケールバーは0.01mm

内湾指標種群(B)

1.Grammatophora macilenta
2.Palaria sulcata

汽水砂質干潟指標種群(D2)

3.Navicula alpha

海水泥質干潟指標種群(E1)

4.Tryblionella granulata
5.Diploneis smithii

外洋指標種群(A)塩分が35‰以上の外洋水中を浮遊生活する種群。
内湾指標種群(B)塩分が26~35‰の内湾水中を浮遊生活する種群。
海水藻場指標種群(C1)塩分が12~35‰の水域の海藻や海草(アマモなど)に付着生活する種群。
海水砂質干潟指標種群(D1)塩分が26~35‰の水域の砂底に付着生活する種群。
海水泥質干潟指標種群(E1)塩分が12~30‰の水域の泥底に付着生活する種群。
汽水藻場指標種群(C2)塩分が4~12‰の水域の海藻や海草に付着生活する種群。
汽水砂質干潟指標種群(D2)塩分が5~26‰の水域の砂底に付着生活する種群。
汽水泥質干潟指標種群(E2)塩分が2~12‰の水域(塩性湿地など)の泥底に付着生活する種群。
上流性河川指標種群(J)河川上流の峡谷部に集中して出現する種群。
中下流性河川指標種群(K)中下流域、すなわち河川沿いの河成段丘、扇状地および自然堤防、後背湿地といった地形が見られる部分に集中して出現する種群。
最下流性河川指標種群(L)最下流域の三角州の部分に集中して出現する種群。
湖沼浮遊性指標種群(M)水深が1.5m以上で、水生植物が水底には生息していない湖沼に生息する種群。
湖沼沼沢湿地指標種群(N)湖沼における浮遊生種としても、沼沢湿地における付着生種としても優勢な出現が見られ、湖沼・沼沢湿地の環境を指標する可能性が大きい種群。
沼沢湿地付着生指標種群(O)水深1m内外で、湿地および植物が一面に繁茂している沼沢、ならびに湿地において付着状態で優勢な出現が見られる種群。
高層湿原指標種群(P)ミズゴケを主とした植物群落および泥炭地の発達が見られる場所に出現する種群。
陸域指標種群(Q)前述の水域に対して、ジメジメとした陸域を生息域として生活している種群(陸生珪藻)。

■解析・考察

解析は珪藻化石の環境指標種群に基づき行います。それら環境指標種群の出現状況により珪藻化石帯を区分し、 それぞれの堆積環境について検討していきます。珪藻は水成植物であるため、水分の少ない乾燥した陸域では生育できません。 そのように珪藻化石が少なく統計的に十分でないときは堆積物の特徴や花粉分析など他の分析結果などを考慮して検討する必要があります。

■参考文献

安藤一男(1990)淡水産珪藻による環境指標種群の設定と古環境復元への応用.東北地理,42,73-88.

小杉正人(1988)珪藻の環境指標種群の設定と古環境復元への応用.第四紀研究,27,1-20.