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生業に関わる方法

種実同定

■キーワード

  • 植物栽培
  • 植物利用
  • 遺構の性格
  • 産状
  • 堆積物(水田・畑・住居)
  • 水洗篩い分け
  • フローテーション
ヒエ現生
ヒエ現生
アワ現生
アワ現生

■概要

種実同定は、遺跡付近における植物栽培状況や植物利用状況の推定を目的とします。 種実は、一般に同定レベルが高いため、栽培あるいは採集された植物をより具体的に推定するのに有効です。

また、有用植物の種実の産状により、出土遺構の性格を推定することが可能です。 たとえば、遺跡から普通に出土する種実類の1つであるオニグルミ核は、人により利用された場合には、 打撃痕を有する状態や破片の状態で出土します。このような状態のものばかりが土坑から出土した場合には、 廃棄に関わる遺構(ゴミ穴)である可能性が考えられます。逆に、完形のものばかりが出土した場合には、貯蔵穴である可能性が考えられます。

■対象試料

対象とするのは、抽出済みの種実および堆積物試料です。堆積物試料は、水田・畑地といった耕作地のほか、 住居の覆土など栽培・利用状況が反映されていると想定される堆積物が対象となります。

■分析方法

堆積物試料からの採集は、最小0.25mm目の篩を用いて水洗篩い分けを行います。処理量は、堆積物の質により異なりますが、100cc(握り拳大程度)数リットルです。 種実の採集方法は、得られた残渣から実体顕微鏡下で拾い上げます。なお、住居の覆土などは、水洗篩い分け後、更に炭化物などの浮遊物の回収(フローテーション) を行い、回収物から実体顕微鏡下で種実を拾い上げます。

種実の同定を行い、分類群ごとに部位・個数・状態などを計数・記載します。得られた種実は、70%程度のアルコールに液浸保存します。 なお、炭化種実の場合は、破損を防ぐため、液浸か乾燥かどちらかに統一し、乾燥保存する場合には、袋以外のプラスチックケースなどに保存します。

■解析・考察

各分類群の産出部位・個数を集計して一覧表を作成し、栽培・利用状況を推定します。 また、各分析地点における層位的出現傾向の解析をし、栽培・利用状況の推移を推定します。 さらに、遺跡間での比較検討から、類似性や特異性を見出し、植物利用状況の差や栽培植物の伝播・普及について推定します。

■他の分析法との併用

このように、種実同定は、栽培・利用状況の推定に有効ですが、必ずしも堆積物中に種実が豊富に良好な状態で保存されているとは限らず、 特に畑地や住居などの覆土では炭化していないとほとんど残りません。 また、種実は、花粉などに比べて生産量が少ないため、堆積 物中に保存される可能性はやや劣ります。 したがって、栽培・利用状況をより詳細に議論するためには、種実同定に加えて、花粉分析やプラント・オパール分析を行い、 総合的に検討することが望ましいといえます。