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放射性炭素年代測定[加速器質量分析法(AMS法)]

年代値の補正

1.年代値の算出

現在の14C濃度に当たるものとして、西暦1,950年の14C濃度を標準とした試料を用いています。1,950年以降の核実験によって、大気中の14C濃度が高くなったために、14C濃度が過去現在を通じて一定であるとした原理から外れ、測定した年代値に支障が出るからです。つまり、放射性炭素年代測定による年代値は西暦1,950年から何年前のものかを表す数値なのです。年代値を求める計算式は、

(年代値)=-log(試料の計数率/標準試料の計数率)×(半減期)/log2

となります。この時の半減期は5,568年、標準試料は主にNISTシュウ酸が用いられています。

測定によって算出された年代値とは、標準偏差内の年代値です。例えば、 2,500±100yrBPであれば、西暦1,950年から2,400~2,600年前のものである確率が68%であり、2,500年前のものである確率 が一番高い、という意味になります。従って、32%の確率でこの年代幅の中の年代値をとらない可能性もあるわけですから、年代値を用いる時はこのことを念 頭に入れておく必要があります。

 

2.年代値の補正

(1)同位体分別効果の補正

同位体分別効果とは、試料種やその環境の違いによって、試料への炭素同位体の取り込み方に差が生じることです。例えば、樹木などは重い14Cよりも軽い12Cを選択的に取り込むために試料中の14C濃度が大気中の14C濃度より低くなり、貝などの炭酸塩でできたものは大気中の14C濃度とほぼ同じか高くなる傾向があります。同位体分別効果は同位体の質量差に比例するので、安定同位体である12Cと13の同位体比をみれば、試料が外部からの炭素の供給を絶った時点の試料の14C濃度を知ることができ、同位体分別効果による年代値のずれを補正することができます。

同位体分別効果の補正のための13C/12C比は、従来は気体質量分析計で測っていました。ところが、加速器質量分析計で14C/12C比を測定する際にも質量分別効果がおこるため、更にこれらを補正する必要があります。パレオ・ラボでは、加速器質量分析計の測定精度が向上し13C/12C比の高精度測定に適用できるようになったため、13C/12C比も加速器質量分析計で同時に測定し、同位体分別効果の補正を行っています。標準試料の同位体比はAD1,950年の樹木年輪を用いることから、その平均的な値δ13C=-25.0‰にすべての測定値を規格化する事が国際的に決められています。ほとんどの試料は-20~-30‰の値になるので補正後の年代値は±80年の幅で変わります。貝殻などは0‰前後であるため年代値で約400年古くなります。

(2)暦年代較正

暦年較正とは、14Cの半減期5,568年を使用しているために起こる年代のずれ(実際の半減期は5,730年ですが、放射性炭素年代測定法が用いられた当時の半減期はリビー教授が算出した5,568年であり、途中で半減期を変えることによる14C年代値の混乱を防ぐための国際的な申し合わせになっています)、および14C濃度の経年変化(過去の宇宙線強度や地球磁場の変動による14C濃度の変動)によるずれを補正するために、年代が判っている樹木年輪を放射性炭素年代測定法で測定し、年輪の年代と放射性炭素年代測定で出た年代を軸にした較正曲線を作成し、これを用いて年代を較正することです。

測定で算出された14C年代値は、この較正曲線を用いて暦年代に較正することができます。つまり、測定年代と較正曲線との 交点が較正された暦年代となります。暦年較正には、OxCal4.1 (IntCal09) を使用しています。約五万年前まで較正できますが、一万年よりも古い部分の較正曲線は珊瑚、および湖底堆積物中の縞状の堆積構造を用いたデータであり、ま だ不確定要素を持っているため参考程度にしておくとよいでしょう。また、海洋性試料については、海洋リザーバー効果によって実際の年代よりも数百年古い年 代を示す場合があります。海洋リザーバー効果には地域差があり、平均的には約400年ですが、日本の北の方では700年程度古くなることもあります。より 確かな年代を求めるためには生息していた地域を限定し、暦年較正曲線の差を補正する必要があります。

暦年較正された年代と較正されていない従来の炭素14年代は、ハッキリと分けて用いなければ年代値 の混乱の要因になります。しかしながら暦年代(Calendar age)の方が実年代により近いので暦年代の方を使うようになりつつあります。しばらくの間は両方の年代値を併記することがよいと考えられます。